君と遠く








「ああついてないな。何度絶体絶命になればいい?」
 ユミルの小さな溜息は巨人の集まる足音にかき消された。
 獣の巨人の先導により、ウォール・ローゼを越えてライナーとベルトルトがエレンとユミルを連れた巨大樹の森が巨人に襲われている。
 飲み込みの早い巨人は樹を上ってきかねない勢いだ。
 獣の巨人の支配下にあっては夜に巨人の動きが鈍ることは期待できない。
 加えて暴力的な数を投入されている。ライナーがいくら固かろうと、ベルトルトがいくら大きかろうと、この数で食いに来られては凌ぎきれないだろう。エレンやユミルでは言うまでもない。
 まさに四面楚歌、八方塞がりである。お手上げだ。
 ベルトルトとライナーは先程から押し黙ったままでいる。
 どうやってここを切り抜けるのかそればかり考えていたエレンが、二人を見やれば何か決意めいたものが窺えた気がした。
 ベルトルトはライナーが動くのを恐怖していた。その瞬間にベルトルトの世界が終わるのが分かっているから、ライナーを見ることもできないでいる。本当はライナーの目も耳も口も塞いで、エレンもユミルも捨ててここから逃げてしまいたい。
「立体機動は…そうだな、エレンが使え」
 ライナーがいつもの訓練の時のような、しっかりとした声で言う。
「は…」
「決めてたことだ。仕方ない」
 ライナーが自分に装着していた立体機動装置を取り外していく。
「俺が巨人になってお前らを放るから、着地は巨人化するなりして何とかばらけずやってくれ。後はベルトルトが運ぶ。ベルトルトは巨人の姿だと早くは移動できないが一歩がでかい、それなりにここから離れられる」
 エレンはやっとライナーの意図が分かった。
「ライナー!?」
「戦っても、死ぬさ。じっとしていても死ぬだろう」
 だったら死に方くらいはせめて選べたらと、ライナーはここへきて強くそう思う。エレンには戯言にしか聞こえないだろうが。
 きっと無為に死んだ人間を多く見過ぎた。同時に、無為に死ぬまいと生きる人間を見過ぎたせいだ。
「ベルトルト。後は頼んだ」
「ライナー、ライナー」
 堰を切ってベルトルトはライナーの名前を呼ぶ。まるで呼べなくなってしまう前にと急いているように。
 エレンはいま体を巡る激情の正体が分からずただ声を荒げた。
「何でだよ…俺はお前達を恨み続けて!5年!5年だ!」
 それなのにどうして、どうして涙が溢れそうになるのだろう。
 さっき対峙した時もそうだったが、こんな時に思い出されるのはみんなが一緒で楽しかったり何気なかった頃の記憶ばかりだ。
「クリスタが――ヒストリアが言ってくれたよ。自分の為に生きろってさ。私はあの城で、同期を守れてそんなに悪い気はしなかったなぁ。だからあの時はあれが私のしたかったことで、あれが私の為だったんだ」
「…?ユミル、分かりにくい」
「だから、おたくらも好きにすればいい、と思う。死に急ぎ野郎や私のことや、故郷のことはさて置いてさ。いや私は死ぬ気ないけど」
「言いやがる。俺は今、何の迷いも無いんだが」
 ライナーが笑ったのをエレンは見た。
 仲間が安心するあの声だ。
 仲間が安心するあの笑顔だった。
「…結局お前を一番辛い目に合わせる」
 悪いな、とライナーはベルトルトに告げた。
 恐らくベルトルトは数多の巨人に齧られ食い千切られながら一歩でも故郷へ進むことになる。巨体の分、地獄は長いだろう。
 ベルトルトは泣きはらしたまま今度はまっすぐにライナーを見、もう一度名前を呼んだ。
 ライナーがいなくなるのならベルトルトの世界はもう終わる。
 それでもベルトルトはライナーとの約束を破れない。
 それに賭けて、ライナーは戦うことを選んだのだ。
 エレンとユミルのいる樹がひときわ大きく揺れた。
「さぁ、腹括ってくれ」
 …馬の蹄の振動と立体機動装置のガスの噴出音が遠くから聞こえた気がした。
 





















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みたいなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁもっと巨悪が現れたらベルライと人類が手を組んで戦うことになって、ベルライは死亡フラグをへし折れるんじゃないかと思ったりしてさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
いやでもベルライがしたことを思うと許されないだろうなっていうのは考えるんだけどさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
やれなくなる前にやっとけってネタでした。
死亡フラグしか用意されてないように見せかけて生きてくれんだろうか。

ライナーは外した立体機動装置を巨人化した後にエレンに渡して、3人ごと放る算段。自分で書いておいて何ですが、それってどうなん…?(笑)
その後はできるだけライナーが戦って足止め、超大型がエレンとユミルを抱えて移動(大きいから通常の巨人に食いに来られてからいよいよ動けなくなるのに時間がかかる為)。
超大型巨人は多分殆ど歩けないんじゃないかと思うんですが、ここでは歩ける設定にしました。
あと多分調査兵団が自分達を追ってきてることも念頭に入れてて、とかも考えたんですけど全部書いても長くなるだけだしなーと切りました。
とにかく分かっていないことが多すぎるのでふわっとしてます。ふわっ…!
あーもーホント生きて故郷に帰ってくれ!