願いを叶えしは我が至上 |
実際、護廷の副隊長という仕事は多忙を極めるもので、九番隊副隊長を務める檜佐木が同僚で後輩の三番隊副隊長と顔を合わせたのは一週間ぶりにもなるのだろうか。 夏も中盤の暑さに日々辟易していたこともあって、久々に顔を合わせた二人の会話の内容はそんなつまらない季節の話だった。 そこで海の話題が何気なく出ただけなのだ。 「海、ですか?遠目に少し見たことあるくらいでしょうか。僕は任務以外で現世に行きませんから」 つまり用も無いのに寄り道などしない、と言われているのだが檜佐木はそのことに関しては無視することにした。 「マジかよ。お前何年生きてんだ」 「え、さぁどうなんでしょう。知りません」 「は?」 「瀞霊廷での出生は全て司法局に登録されているから調べれば分かるんですよね。何だか今更そういうことをするのも気が乗らなくてしていないんですけど…」 誕生日は護廷入隊が決まった折の身元確認の書類に記載されていたのを見て初めて知ったのだと言う。その書類は司法局管理室を通されており、間違いは無い筈だ。 「あの時にちゃんと書類に目を通していれば生年も分かったんでしょうけれど、入隊の手続きで慌ただしかったものですから誕生日に目を通すだけで精一杯でした」 そんな何でもなく吉良は笑う。 「何で」 なぜ瀞霊廷出身の吉良が、と檜佐木は問うた。自身の年齢を知らないことは流魂街出身であれば珍しいことでもないが、彼は瀞霊廷の出身で下流貴族の末である。そもそも海を見たこと無いというだけでかなり想定外であったのに。 「物心がついたころばかりで自分の齢も分からない頃に両親を無くしましたし、その後は…色々ありましたから」 何でもなく吉良は笑う。 「先輩、折角ですから今度海を見に誘って下さい」 「何だったら今からでも」 「え!?」 「俺、今日誕生日でな」 「はい?」 「だからプレゼント代わりにちょっと付き合え」 海を見て吉良が楽しそうにしてくれたのなら、それだけで檜佐木はきっと満足してしまうであろう自分を考えた。 ああ、それはとてもいい。 |