道の端 |
自隊の傍を通っていた後輩に声を掛けたら後輩は「暑いですね」と苦笑した。 彼が九番隊副官室や自分の私室に入らなくなって二ヶ月ほどになる。護廷を尸魂界を裏切った隊長の下に就いていた自分達が接触するのは宜しくないからだ。 自分は何も知らされていなかったから周囲から同情的な視線を送られているが、頑としてあの時の経緯を口にしない吉良を護廷は幾許か警戒している。 「寄ってけよ。茶ぐらい出すぜ?」 「すみません、これから草鹿くんと約束があるんですよ」 彼はこの二ヶ月でこういう嘘は上手くなった。 「いつまで振られ続けりゃいいんだよ俺」 軽い調子で言ったつもりだが吉良はまた申し訳無さそうに陳謝した。 どうせ、きっと、自分達がこうして少し何かを話したところで護廷にも今は遠くに居る彼らにも何ということは無い筈なのに。 何かあるとしたら、それは自分の。 「それにしても本当に暑いですねぇ」 ちょっと失礼しますと言って彼は飾り紐で自分の髪を結い上げていく。 「夏の間だけでもそうしてりゃいいのに」 彼の白い項を見てそんなことを言うと、彼はちょっと複雑な顔をして見せた。 「…いやだなぁ」 「ん?」 「同じことを言われる」 俺は誰と同じことを言ったんだと聞くこともできないでああこれは振られるわと内心項垂れると、もう彼を引き止めておくこともできずその後一言二言言葉を交わして彼の背中を見送った。 この二ヶ月間、彼から奴を髣髴とさせるようなことを聞いたのはこれが最初だ。 「へ?きららんと?うん、昨日お茶飲んでお菓子食べたよー」 |