雪 20060121


 冬ということも相まってか知らぬが、吉良の指先が随分と荒れていることにこの自分が気付かぬ筈が無い。
 理由と問い詰めると吉良はあたかも今気付いたと言わんばかりにあっさりとしていた。
「最近は紙面ばかり扱っていましたので、それで切ったり…あとは書庫の古い棚のささくれに引っ掛けたり、」
 ええいこの、書庫の棚なんて総隊長の爺さんにでも言って新品に入れ替えてやるからそういう傷は作るなと自分にしては強く言った。
 だって。
「いったそうやなぁ…」
 吉良はいつもの様に少し困った風に笑う。
「別に、さして。隊長のお気を煩わせるような程の事でもありません」
「気になるわ。せやから気ィ付け」
「隊長が仰るなら」
 市丸は何より自分の傷を気にも留めない吉良に苛立ちを感じていたのだが、そんなことは教えてやるものかとそっぽを向くと吉良が今度は可笑しそうに笑った。











バレンタイン短文『戀心』〜檜佐木と恋次の会話〜 20060214


「バレンタインだとよ」
「こういうお祭騒ぎは嫌いじゃないっスよ、俺。甘いモン好きだし。先輩要らないんなら下さい」
「で、だ。阿散井。幾つ貰った?」
「えーと一、二、三、四…。……………先輩、吉良から貰ったのはこの場合数えていいんですか」
「構わねーだろ。似たような生き物だ(断言)。俺も貰ったしな。つーか何であいつはわざわざ今日のこの日に作るんだ?」
「アレでしょ、いちま…」
「イヤ言わんでいい。忘れろ」
「そういえばさっき吉良の奴、女連中と楽しそうに菓子交換してしてましたよ」
「ふーん」
「毎年、吉良より乱菊さんのがチョコを貰う量が多くて、乱菊さんより吉良のがチョコをあげる量が多いって本当ですかね」
「……あり得るな」
「んで俺達はやっぱりホワイトデーにはお返しするんですよね、吉良にも」
「来年も吉良のチョコが欲しかったらな」











消えていくは冬の残り香 20060327


 春を目前に風の強い日が数日続いた。
 それでも庭隅に綻びる椿は首も落とさず咲いていたので、弱い花かと思っていたが存外強いのだなと呟いた。
「散り際を心得ているのでしょうね。時期が来るまでは意外と散らないものです」
 返ってくる副官の言葉にふうんと答える。
「ですから、大丈夫ですよ」
 そう笑う副官を抱きしめたのは、実はこの時一度だけだった。