遠く、木と少女の輪郭









 その日、遠くに少女が見えた。
 死覇装ではなく着物であったので死神では無さそうだと思った瞬間、どろん、と白っぽくてひょろ長い、木のような人型が眼前に現れ
「侘助である」
その人型が薄く口を開く。
 果たして斬魄刀の世界に引きずり込まれたと分かった。
 ではあの少女は現実と斬魄刀の世界とどちらの住人であるのだろう。尤も斬魄刀の世界とは自分の内面のことなので、となればあの少女は自分の想像の産物ということになる。
 己の斬魄刀と対話し能力を知るというのは始解に至りやっとできることだ。一切の前触れ無く具象化して現れるとはまさか予想だにできなかったが。
 大概は、その具象化したものからどつき合いや追いかけっこを強制されたりして斬魄刀側が主人の力量を測るものだと吉良も小耳に挟んでいたのだがこの人型はそういうことをせず
「よく聞け、少々変わった能力ゆえ」
と、とつとつと自分のことを話し始めた。
 辛気臭い顔だなとどこかでぼんやり思ったのを感じ取られたのだろう、侘助は吉良の眉間を容赦なく突っついた。

 近頃神鎗は勝手に具現化し主人から離れるということを覚えた。
 全く悪癖である。
 いい加減灸を据えねばなるまいと考えていた刹那、どこから湧いたのか神鎗は市丸の下腹部に突っ込んで刀身に戻った。
 必要も無いのにわざわざ骨盤に響かせるようなことをしやがってこのやろ、と斬魄刀を見やれば何やら霊圧が浮ついている。まるで外見相応の幼子のようだ。
「なんや、どこ行っとったん」
「秘密」
 神鎗からよく知った霊圧が幽かに辿れる。
「イヅルに会うたんか」
「会ったというならこれまでも会っている」
 どこでこういう屁理屈を覚えてくるのだろう。
「貴様似だ」
 兎にも角にも主人を差し置いて斬魄刀がイヅルに接触するとは由々しき事態である。
「ええ加減にせんと十二番さんへ預けるで」
 ふっと神鎗が無言になった。
 だがふわふわした霊圧はさっきのままだ。何だこれは、見せ付けられているのだろうか。
「イヅル早よ戻ってこんかなぁ」





















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神鎗がイヅル大好きだったら可愛いなと思う。