昔に戻れるならそれでも |
檜佐木の顔とその手に持つ刀とを数度交互に見やって吉良はようやっと口を開いた。 「この胡散臭い刀に」 「…………………おう」 「霊圧を入れろと」 「おう」 「総隊長のお達しで」 「おう」 「嫌ですよ」 「言うなよ!言ったとしても俺に聞こえないところで言ってくれよ何で聞かせるんだよ!」 「どうせなら道連れに…」 「ひどい!」 山本総隊長より護廷十三隊隊長・副隊長格全員への下知は浦原喜助が精製した刀に霊圧を込めろ、延いては黒崎一護に死神の力を取り戻させよとのことで、それを「胡散臭い刀」の一言で切って捨てた副隊長は吉良だけだろう。 十一番隊は黒崎と親密であったから今回は変に破天荒な行動は無かったと聞いているし、十二番隊ですら浦原喜助経由でか意外と素直に従ったらしいというのに、まさか後輩が一番渋るとは予想だにしなかった。 檜佐木もその場に集まれなかった隊長格に声をかけて回るというのはやはり面倒事を押し付けられたということかとここで実感が出てきて肩を落とす。 「まぁ嘘です。いや嘘じゃないんですけど、命令ならやりますよ仕方ないなー」 「そういうこと明け透けに言わないでくれる!?」 こいつそれなりに黒崎とも仲良さそうだったのに何なんだ。 檜佐木の手から吉良が刀を掠め取る。 でも昔はこういう奴だったと思う。 昔に戻れるならそれでもいい。 「おまえ結構可愛いよなぁ」 吉良が眉間に皺を思いっきり寄せて相当酷い顔を作る。 「そういうのを一番乗りでお前に言えてたら良かったのにと思うよ」 「思いませんよ」 僕は。 今度は泣きそうな顔で顔を背けようとするので檜佐木は吉良の鼻を摘んで笑った。 |