白椿の右 |
鳳橋は、吉良に触れた先から自分の霊圧が彼へ流れ込むのをただ見ている。 零番隊と死神代行が王宮へ向かったのを見送って各隊長はめいめい自隊へ戻っていった。 寄り道をしているのは鳳橋くらいだろう。いや卯ノ花はどうか知れない。鳳橋が四番隊に足を伸ばす間にかち合わなかった。 護廷を建て直しに来たと言う割りに零番隊はあっさり帰った。しかし裏廷伝令部を呼びつけ書面を手渡していたので四十六室からこれから何がしかの下知がなされるかもしれない。暫くは零番隊による王宮と護廷への頻繁な行き来が繰り返されるだろう。 「面倒臭いの苦手なんだよね…」 こと三番隊は副隊長が巡邏最中の星十字騎士団侵攻であったため席官の配備が早かった。それだけに被害も甚大で、現在は上位席官を多く欠いた状態での隊の運行を余儀なくされている。 悲しいかなそう遠くない過去にあった三番隊隊長を失い副隊長も捕縛という事態の経験は活かされているため「それでもマシな方」との評価を受けているのだが。加えて四席がかなり頑張ってくれている。 「このままじゃ過労で倒れちゃうな」 星十字騎士団と対峙した三番隊上位席官は当初「霊圧消失」の報告が多かった。 滅却師の霊子を従属させる特徴に則り、意図的に体内の霊子を分散させられた為である。 元来霊圧の高い上位席官は四番隊の霊子縫合を受け回復の兆しが見られている。 しかし吉良に限っては触れるほど近くでないと霊圧が感知できない。 こうしてちょくちょく鳳橋が霊圧を流しているので霊子が足りないわけではないと思うのに。 「失礼します」 硬い声の四番隊三席が入ってくる。鳳橋が吉良に霊圧を渡していることに気付き一瞬眉を顰めた。 実は確かに卯ノ花四番隊隊長直々にこの行為は止められている。 「宜しいのですか、吉良副隊長なら隊長に仕事をなさって欲しいとお考えだと思われますが。…失言でした、ご容赦を」 「イヅルのこと詳しいの」 「吉良副隊長が四番隊在籍の折、何度か同じ現場に出ております」 さて零番隊が数人の隊長格を王宮へと連れて行った中に吉良は入らなかった。 霊圧が捕えられなかったか、歯牙にもかけられなかったか、それとも。 「斬魄刀が戻ってきたと聞き及びました。良うございました、持ち直されましょう」 そうだ吉良の斬魄刀は何とか主人の元へ帰ってきたものの、それを握っていたはずの右腕はとうとう見付けられなかった。 まるで誰かが手を引いて連れ去ってしまったように鳳橋は思う。 |