秘匿 |
三番隊隊長市丸ギンから椿と金盞花が一輪ずつ届けられた。 椿は白かったが一筋紅が走っている。 催促であるなと四番隊隊長卯ノ花烈は察し、数日前に送られてきた書類を捜して筆を手に取った。 四番隊員の他隊への移動は回道・治療技術以上に戦闘能力を買われた場合に限り起こり得る。 四番隊上位席官からの進言で行われることが多いが、四番隊隊長卯ノ花の判断基準はその対象者が卯ノ花の戦闘能力に気付いたか否かである。そういう者も希ではあるがいる。 気付いてからはそれこそ化け物のような目で卯ノ花を見る者もいたし、そそくさと避ける者もあった。分かり易くて助かる。 さてこの市丸が寄越せと催促してきた吉良はといえば、何だか奇妙な目つきをしてこちらを見ていたように思うが結局はどうだったのだろう。 秘匿に長けているようだ。 歴代の四番隊副隊長の中でも山田清之介は卯ノ花が回道を極めた理由を悟りそれを軽蔑した。 卯ノ花がそれを知っているのを更に知っていながら山田はその心根を改めることをしなかった。 それで良しとしたのは卯ノ花が四番隊隊長として、山田が四番隊副隊長として相応の力を持っていると尚お互いに認め合っていたからだ。 そんなことを思い出して、卯ノ花自身、己がどうして回道を極めるに至ったか時折分からなくなる。 己を治し戦う相手を治し無限に戦いを愉しむためだと思っていた、今でも思っているが、この長い安寧に浸かっているうちにでは只怪我を負った者に治癒を施すことに価値を全くを見出せないかと問われればそれは嘘になるような気がした。 そう思っていたら目の端に黄色い花が映る。 金盞花。 三番隊には分からぬだろう、戦いがどれだけ心を躍らせるものか。 卯ノ花は吉良の三番隊移動通知に判を押した。 |