千歳 20080918


 長い長い時間の中、あの人を慰めるものは幾つかあった。
 生者であったり死者であったり何がしかのいきものの形をしたものであったりした。
 竜に名前をつけたこともあった。
 それがまた単純なものだったので、そのネーミングセンスは何とかならないものかと苦笑いを零した。竜も笑んだようだった。
 駄目だろうかとしょ気る上司は知らない、そんな名前がどれだけ嬉しいものであることか。
 だから自分はまた笑ったし、竜は感謝を告げるかのように彼に頬を摺り寄せた。
 いきとしいけるものの淋しさが分かる人だった。そんな貴方に笑っていて欲しいのだと、今でも。











石蒜 20080930


 あの人の足は小さかった。むかし潰されたのだと言った。
 自分は昔誰ぞの足を潰したことがあった。
 あの人は左の小指が不自由だった。むかし壊したのだと言った。
 戯れに手を踏み抜いた生き物を思い出した。
 あの人は時折草野原の匂いがした。彼岸花が咲いている間だけは花を恐れて人が近寄らない野畑で幾許か心穏やかに過ごせたのだと言った。
 自分は昔、殺した人間を地獄の荒地に放り投げたことがあった。
「なぁ、アンタまさか」
「なにー?」
 この人は己の罪の形をしている?