星祭に馳せる








 普段から得体がどこか知れない武市だが、今日は今日とてまた巨大な笹を仕入れてきた。
 そして自然と笹への飾り付けが慣行される。女性らしく来島は鮮やかな色紙を使った飾り付けを笹に施し、男衆は来島の命令で短冊作りに勤しんでいる。
 そんな様を高杉は自室から目の端で捕らえていた。
 
 来島が高杉に短冊を一枚寄越してきた。
 高杉の私室の縁外からである。その無礼はこの際、不問。
「いらねェよ」
 言われて、来島は自分が浮かれて高杉の気質だとか機嫌をすっかり考え損ねていた自分に呆然となった。彼が祭り好きだからきっと喜んでくれているだろうと短冊まで持ってきたのは軽率だった、そもそも総督たる彼が戦艦でこのような祭事を黙って許してくれているだけで重畳だとどうして考えが及ばなかったのか。
 来島は気まずそうに顔を伏せる。
「俺ァ願い事書く柄じゃねぇっつってんだよ。七夕は構わねェさ、好きにしな。元々祭は好きだ」
「は、はい!」
 高杉が機嫌を損ねていたわけではないことに安堵した来島は顔を綻ばせて走り去っていった。

「柄じゃない、ねぇ」
 部屋の外で控えている岡田が俄に口を開いた。
「俺の願いは一つだけだし、それを叶えるのは自分だと、そういうことだ」
 そもそも他人に願いを託す性格ではない。
 まぁそんなところだろうと高杉の言葉を聞いて岡田は納得し浅く笑った。
 そして盲目の剣士は問う。
「そうさね。目を取り戻したいと、思ったことは無いのかい」
「昔俺の左目になりたがっていた男が似たようなこと言ってやがった」
 自分はそんなこと望んだこともないのに。





















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左目の代わりがどーのだとか煩かった奴がいる。