銀時に坂田という姓を与えたのは高杉だった。
曰く、「この間会った黒いもじゃもじゃに似ているから」と。
その黒いもじゃもじゃは坂本といった。
銀時が件の「坂本」と直接見えるのは数年後、攘夷戦争に決起してからとなる。対面し「ああこれが例の『黒もじゃ』ね」と思った時には既に「よう黒もじゃ!」と挨拶していた。
「高杉、おんしゃーこん白もじゃにワシんこつどう説明しちょった」
「黒もじゃ」
「アッハッハッハ、泣いていい?」
「高杉ィーお前この黒もじゃに俺のことどう説明してたの?」
「白もじゃ」
「ウフフフフ、泣いていい?」
銀時に十月十日という誕生日を与えたのは高杉だった。
曰く、「覚えやすいから」加えて「一月一日は忙しくて忘れるだろう」と。
元旦が忙しいというのは銀時にはピンとこなかったが、高杉を初め桂・他郷の坂本は良い家柄の子息で、元旦には色々格式ばった決まりごとがあるらしかった。
つまり祝ってくれるつもりで付けられた誕生日だ。
「俺は高杉から貰ってばっかりだね」
「無くても困らないかもしれないがある方が楽だろう、取っておけよ」
それは分かる。
普通の人間にあって当たり前のものを持たないというのは周囲の人間が気を遣うことがある。確かに姓名や誕生日など無くても自分はそんなに困らないだろうが、そういう他人の視線や気遣いが煩わしく感じられることはあっただろう。
そういうのから多少なりとも護られていたのかもしれない、この小さな友人に。
「ていうかお前、自分より俺のが誕生日早いのが嫌だったんだろー」
ふと気付いたことをするりと口に出してしまった時にはもう後の祭。
「死ねこの天パ!!」
尤も、銀時は自分を高杉より一つ二つ年上だと認識している。高杉も恐らく分かってはいるが認めたくないのだろう、かなり怒っている。
体格の良くない高杉の攻撃は銀時には左程効かないが、今の蹴りはいいところへ決まった。
なんにしても昔から高杉は他人を振り回すくせに相手を納得させてしまうことにかけては天性でこなしてしまう魔性のちびっ子だったという話。
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