あなたのいる世界いない世界








 月詠が出て行った座敷で銀時は寝っ転がったまま障子から覗く星空を見ていると、いつの間にやら目を覚ましたのだろう日輪がやんわりと三味線をはじいた。
「三千世界の」
 銀時が目をやれば日輪は手を止めた。
 咎めるように見ただろうか。そんなことを気にしたが日輪はいつもの通りにこにこと笑うばかりだ。
「聞いたことなかったけど、銀さんて昔はかなりやんちゃしてたのかしら」
 高杉の作ったこの都都逸は当時かなり流行った。殊更攘夷志士や、その贔屓の花街で。
 今となってはこの歌を攘夷志士が作った物だと知らない連中も多いだろうが、歌だけは残っている。都都逸を知らぬ者も口説き文句で使うぐらいには。
 日輪はこの都都逸の文句をさらりと出した銀時から何か嗅ぎ取ったのだろう。流石にできた女人だと銀時はまた視線を空へ戻した。
「作った奴を知ってるだけだ」
 まさか彼の作ったものがこうやって残り紡がれていく様を見ることになるとは思わなかった。
 いや、嘘だ。
 本当はそういう時代が来るようにしたかったのだ。
 彼はいくさ人でありながら風流人であって、時勢が時勢でなければ詩人や歌人になっていただろうと周囲も当人も考えていた。彼が好きなだけ風流に浸り、形となってそれが残っていく時代を見たかった。攘夷が成ればそういう時代になるだろうと考えたことがあった。
 それは今とどう違うのだろう。
 攘夷は成らなかった。
 師の意志を遂げることも敵を取ることもできなかったが、高杉の歌が残る今は、
「あいつはどうして今のまま生きることを拒んでんだろう」
昔思い描いた世界と何が違う。
 答えを知っているのに銀時は小さく声に出した。
 日輪が三味線を七七七五にはじくので、昔を思って銀時が下手な都都逸を少し歌った。















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あかん色々混ざった。