通い白梅 |
銀時が松陽のところに身を寄せるようになってからこれだけ寒い冬は初めてで、梅の花が開くのがいつもよりひと月は遅れた。 そして案の定高杉はこの冷たい風に負けて寝込んでいる。 塾の庭にある白梅を銀時はつまらなそうに見ていた。 「兄上、元気?」 「元気?」 高杉が布団から半身を起こして書物を捲っていたら、障子をほんの少し開けて妹達がこちらを覗いてきた。 「随分良くなった」 お前達は体を壊していないかい、と聞けば三人は元気にはいと答える。 「これね、今日の分」 「昨日の分」 「一昨日の分」 言いながら妹達は小さな水差しに入った白い梅の枝を一輪ずつ高杉の目の届く縁側に並べていく。 「七日前の分」 七本並べて妹達は満足気だ。 高杉が寝込んだのは十日ほど前である。 「俺が寝てる間に梅が咲いたか」 「咲きましたけれど、これはうちの梅じゃございませんの、ねぇ」 「ねー」 「ここのところ毎日玄関に置いてあるんですよ。ねぇ」 さて不可解なと捨てられてしまうところであったが、まぁ勿体ないとか花に罪はございますまいにとか主張して妹達が活けているのだと言う。 「明日は兄上、塾に行かれるの?」 「早く行って差し上げたら良いと思いますわ」 何のこっちゃ。 「そんなに心配なら見舞いにでも行ってやったらどうだ」 「別に心配じゃねーですう。それに高杉ン家に俺が入れるわけねーじゃん」 その主張をしながら毎日早朝に高杉家の玄関先で用を済ますなら別に俺はいらないんじゃ、と桂は思うが自分は銀時が高杉家の誰かに見付かった時の保険なのだという自覚はある。それでいて付き合ってやる自分も大概だ。 「心配でないと言うならこれは何なんだ」 桂は銀時の手の中にある梅の花が立派についた枝を指す。 「………。只の季節の挨拶」 何のこっちゃ。 高杉め、早く体を戻さないと塾の梅がつんつるてんになってしまうぞ。 |