連休中はジローが跡部邸に泊まりにくることになっている。
跡部が一人で過ごしていると聞いたので、しっかり一人で生活できているのかとジローが軽い気持ちで跡部邸を覗きに行ったのが始まりだった。
よく考えなくてもこのお坊ちゃんが一人で家事のさしすせそ(裁縫・しつけ・炊事・洗濯・掃除)ができる筈が無い(「しつけ」は要らないかもしれないが)。
そういうわけで確か三年程前からやむなくジローが連休中の跡部の世話を焼くことになったのである。
ジローは他の部活の仲間も呼んで楽しく過ごそうと考えたこともあるが、跡部がそれだけは嫌だと首を縦に振らない。家事がいくら駄目とはいえ仮にもスポンサーの了承が得られないのならば仕方ないと、ジローも仕方なく承諾した。
跡部は家事のできなさが皆に露呈するのが嫌なのだろうという程度にジローは考えていた。跡部からすればそれもあながち間違いではないのだが、ジローを彼の誕生日に独り占めできる絶好の機会であると跡部は判断したのだった。これは絶対口に出せないと跡部は考えている。
連休中にも部活はある。
今日の部活が終わればジローは一回自宅に帰る。ジローの誕生日、家族とて祝いたかろう。
だが、ジローが生まれた頃だと聞いている明け方に一番にジローにおめでとうと言えることができたので跡部は満足だった。それに夜にはジローは跡部邸にまた戻ってくる。
「跡部ん家のお手伝いさんはさー、休み貰っても休みの間に跡部があんだけ散らかすんじゃ休んだ気にならないだろね」
部活が終わり、跡部が合鍵をジローに渡す時になってジローは唐突に言った。
「お前が居るからいいだろ」
「………世話焼き女房の気質が自分にあるとはオレも気付かなかったなぁ…」
別にジローも家事全般ができるわけではない。連休が終わるまで、跡部による邸宅内被害進行を何とか食い止めておける程度だ。
やはり人様の世話を焼くより寝る方がジローは好きである。だが寝ている間にも跡部がジローの快適な睡眠空間を壊し続けるものだから寝るに寝られず、跡部が散らかした先から家事をやるしかなくなってしまう。
いい加減放っておいてもいいのかもしれないとジローも思うが、それはそれで跡部邸の使用人達の休み明けの苦労を思うと可哀相になってくるというもの。
「オレ、絶対跡部みたいなのとは結婚しないー」
至極真剣に言われたこの言葉が跡部にどんな影響を及ぼすか、ジローはまだ知らなかった。