あしおと 20051004 |
ジローの足音を聞いていた。 さてその段階になって自分は今までジローの足音を聞いたことがあったろうかと初めて考えた。 いつもは跡部に先頭を切って歩かせるものを、今日に限ってはジローは跡部の半歩前を歩いている。 ジローが振り向いて何か言ったようだったが、声が風に流れて掻き消された。 知っているのだ、ジローは。この自分のふとした不安も焦燥も何もかも。 しかし今は彼の言葉も自分の彼へと伸ばした手も全てが風に流されて、後には何も残らなかった。 |
ゆきがこい 20051224 |
昔の話だ。言ってしまえば、小学生の頃の。 小学生中学年用の社会の教科書に「雪囲い」は平仮名で「雪がこい」と表記されていた。自分はそれを「雪が恋」という発音で読んでしまったという恥ずかしく思い出したくも無い記憶がある。 幼等部からの付き合いで、その現場に居合わせたジローはそのことを甚く気に入ったらしく、冬が廻って雪が降る度に意味あり気な視線をこちらへ送ってくる。昔の話をしたら自分が怒ることを知っているので何も言わないでいるようだけれど。 全く彼はあの自分の間違いのどこをそんなに気に入ったというのか。 雪が恋しているのは。 |