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蓮二の姿が見えないと聞き、そんなことになるんじゃないかと覚悟していたとはいえ眉間に皺が寄った。
真田に続いて俺まで眉間に皺を寄せてどうする。テニス部は老けてる人間の集まりだなんて思われたくない。
蓮二は自分の誕生日前後にふらりと姿を消すことがある。
その行動に東京での友人とのことが関係していることは分かっている。しかも最近知ったのだが、そいつと蓮二は誕生日が一日違いらしい。物覚えのいい蓮二は一度見聞きしたことを忘れない。誕生日の度、否が応なしにそいつのことを思い出してしまうだろう。そいつとの別れを断ち切れていない蓮二には酷というものだ。
だがここで甘やかしてはやらない。
追いかけて、こちらが思い切り甘えてやる。叱ってやる。
さて、そう決めたはいいのだが。
「真田、心当たりは」
「…全く無いわけではない」
「能書きはいい、結論から言え結論から」
「紫陽花寺」
「……………」
鎌倉ぁ!?と叫びたくなる気持ちを堪えたところは賞賛されてしかるべきだと思うよ、蓮二。
えいくそ、ここから鎌倉って…30分もあれば着くか?
「紫陽花が色付いてきた、山では涼しいだろうから見頃はまだ先だろうかと一昨日ぼやいていた」
いつからか俺と真田は蓮二の誕生日前後の言動に留意するようになっていた。蓮二は大概失踪前に手掛かりを残していく。弱っているからなのか(何故なら普段の蓮二が姿を消そうと思ったらそれこそ完璧な失踪事件が成立する)、見付けて欲しくてわざとヒントを置いていくのかは知らない。聞いていない。これからも聞かないし聞けないだろう。
俺はただ蓮二を見付けるだけだ。
「んじゃ行くよ。眠り姫をとっ捕まえに」
きっと花の中でまどろんでいる君を、探して起こして連れて帰る。
眼り姫は起こした男を愛すると相場が決まっているものだ。
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