百日紅と蓮と朝顔と君と








 茹だるような暑さの中、それでも咲き誇る花というものはある。
 と、いうことに今日やっと思い至った。
 百日紅が頭を垂れている、部活漬けの夏の日に。
 俺の趣味はガーデニングなんだからもっと早くに考え付いても良さそうなものだが、まぁ最近は学校と家との往復しかしていないし、視界も狭まっていたのだなぁ自嘲気味に思う。別にそう悪いことではないと思うから構わないけれど。
 さて即決行動、と唱えながら俺はコート脇に立つ蓮二に駆け寄る。熾烈を極めるテニス部部活動も、今は蓮二の指示で10分休憩。
「蓮二、蓮を見に行こう!見頃だろ?」
「別に構わないがな、精市…」
「幸村、この時期に何を言っている」
「あれー居たの副部長」
 俺が真田を「副部長」と呼ぶと真田はさも嫌そうな顔をする。こちらも知ってて故意に言っているのだがとにかく、ええい暑っ苦しい。
「何、蓮二。こいつが煩くて蓮も見に行けないと言うなら、今この場で黙らせるけど」
「いや。時間が」
 実際問題時間が無い。この夏休み、学校が開く時間から夜は日が落ちれば照明を使ってでも部活をしているのだから。登校・下校時間を考えれば尚のこと。
「ちょっと朝早くなるかもしれないけどさ、蓮の花が咲くところを見に行こう?」
 蓮二がちょっと考える仕草をした。見込みあり。
「…場所は」
 そう聞く蓮二が堪らなく可愛い。
「俺に任せて。あ、それとも蓮二が好きな蓮池にしようか」
「精市の好きな所がいい」
 これは蓮にも気合を入れて咲いて頂かなくてはならない。

「で、てっきりお目付け役も来るとか言い出すんじゃないかと思ってたんですけどね俺は」
 蓮二から少し離れた所で俺は独り言のように言った。
 脇には真田。だから暑っ苦しいんだって。
「たまには二人で話したいこともあるだろう」
 何だそれは。気を遣われたのか。
「それに俺は毎朝、見事な朝顔に水をやっている蓮二を拝ませてもらっている」
「あん!?」
 聞き出したる話によればこの季節、柳家に大輪の青い朝顔がみっしり咲くらしくそれに水をやるのは蓮二だとそういうことで―――
 そんなもの毎朝見てたのか、この老け顔は!
「蓮二ッ!蓮二ん家の朝顔の種、分けて!ウチに植えるから!!」
 突然話を振ってきた俺に、蓮二は少し驚いたみたいだった。
「精市の庭はどちらかというと洋風だったろう?」
「いいの!そういうのを乗り越えてこそのガーデニング」
「そう言うなら。今年の花から種が取れたら、分けよう」
 そこでお目付け役登場。
「蓮二、俺も―――」
「弦一郎は昔、枯らしたから嫌だ」
「へぇぇぇぇぇ…」
 俺が真田を見ると、奴は随分決まり悪そうにしていた。暑っ苦しい。





















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鎌倉の江ノ島電鉄に『柳小路』という駅があって、その駅付近に蓮池があると知った時は驚きました(笑)。