全国大会二日前のこと









「赤也」
 コートでの打ち合いを終えた切原を静かに呼ぶ声は柳のものだった。振り向く後輩に彼は紙を一枚差し出す。
「決勝のオーダーが決まった。目を通しておけ」
「っス。でも何で、いつも直前まで教えてくれないのに…」
 言いながら柳の手からオーダー表を受け取り自分の名前を切原は探した。今回に至ってはひょっとすると自分の名前は無いのではないかと不安があったものの、ちゃんと発見することができた。
 確かにあるにはあったのだが。
「無・理―――――――――――!!!!!」
 ダブルス2。
 馴染みの無い枠に切原赤也の名前は書かれていた。
 さっすが、綺麗な字だなぁ。
 という思考は端に寄せ、もう一度オーダー表を確認する。
 見間違いであって欲しいという願いは柳の淡々とした言葉に裏切られる。
「何が無理なものか。そもそもお前も立海レギュラーなら全国大会でダブルスの一回も経験しておくべきだ」
「だからって!!何で決勝で!?」
「負けるとでも?」
「まさかぁ!!」
「では、俺がパートナーでは不服か」
「っ………!」
「赤也?」
「う、その言い方は、卑怯、っス!!」
 柳はふっと笑って有無を言わさずオーダー表を赤也の手から引っ手繰った。
「では、よろしく」
「うう…」
 負けるつもりなど微塵も無い上にそんなところは想像すらできない。とはいえ立海の中でも殊更ダブルスのエキスパートである柳とペアを組むとあってはダブルスが得手といえない切原はさすがに緊張を感じる。
 暴走したら怒られるだろうし、と考えるとコートで自由に動き回れる気がしない。
 だが柳ならそんな自分すら巧く扱ってしまいそうだ。それはそれで柳の器に敵わないことを証明しているようで不本意である。
 オーダーは変わらないのだ。無様な試合などできるはずも無い。切原は当日までの猛特訓を覚悟した。
「へーえ、赤也が柳とダブルス?」
「そりゃ責任重大じゃのう」
 気付けば切原の声を聞きつけてレギュラーが集ってきている。
「え、責任?」
「柳はダブルスじゃ負け無しなんだぜぃ、知らねーの?」
「負け…えええええええ、ダブルス巧いのは知ってましたっスけど」
「いつからだっけー?」
「幸村が会った頃からずっとって言ってたろ」
「では中学入る前からですね」
「なんだよな?」
 丸井の問いに柳は声を出さずにこりと笑っただけだ。
「参謀の輝かしい経歴に黒星付けなさんな」
「ひ…」
 仁王にラケットで叩かれた頭が重い。
「やっぱ俺シングルスがいいっス―――――!!」
「シングルスで俺に勝てたらいいぞ」
「くあー!!」
 いじわる!!と切原はもう一度吠えた。





















―――――――――――――――
アニメオリジナルのJr選抜は考えない方向でお願い致します(苦笑)。