港街にて








 たまたま通りすがり同士が友人だったというのならまだ声も掛けられるのに、知り合いとすら言い難い人と会ってしまうと対応に困る。
 特に自分はその人にこれといって興味は無いのだが、相手は引くくらい自分のことを情報を持っているとなると尚更だ。
「やぁ、切原くん」
「あー……………」
 年長者には敬意を。
 これは赤也が立海のあの部で叩き込まれたことだった。
「ども。乾…サン」
 敬意敬意。多分ギリギリ敬意。
「ふうん」
 乾は一人で納得したような声を漏らす。赤也には何が何だか分からないが、似たような人種をもう一人知っているので相手のこういった空気に割と慣れてしまっているのがまた憎たらしい。
「何でこんな所に、とか聞かないんだね」
 乾が聞いてくる。
 すっかり立ち話をする態になってしまい赤也は内心頭を抱えたくなった。
「意外スか」
 赤也は直情型だと言われているし、そんなことくらい自分でも分かる。だが無駄なことを聞くほど子供でもない。会ってしまった以上何でとかどうしてとか言っても始まらないではないか。
「いや。立海の教育方針が伺えて参考になるよ」
「…へぇ」
 そういやこういう考え方をするようになったのも中学生になってからだったかと赤也は思ったがそれ以上は特に何の感情も無い。
 乾はまた頬を綻ばせたようだったが眼鏡の具合で確信は持てなかった。
「ごめんね呼び止めて。じゃ、またその内縁があったら」
「はぁ」
「蓮二に宜しく」
「『れんじ』ってゆーな!」
 何かの大会の折に柳を見付け、その試合に釘付けになり柳をずっと目で追っているとあのおっそろしい神の子と皇帝にぎろりと殺気を向けられた記憶は未だ鮮明に乾を脅かしている。
 とんでもない連中が敵に回ったものだ。
 しかもたった今、悪魔まで呼び込んでしまった。
 乾は天を仰ぐ。
 港街よろしく趣のある街中で少し香る潮風が沁みた。




















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時間軸的には多分全国大会の後。