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幸村がうまいこと言った。ようだ、というのだけが真田にやっと分かった事情だ。
大会に向けて部員達に喝を入れている最中、幸村の言葉を受けて部員の顔が引き締まるのを見た。
彼の言っていることは自分からすれば至極当然のことばかりである。先達が同じことを言っていた姿を思い出せるし、自身も口が酸っぱくなるほど説いた。
それでも改めて最強に君臨する男から紡がれる言葉は部員の心構えを正す、その様がまた自分達の覚悟となるのだと真田は感情が強固になるのを感じる一方で少々浮わついたような気分になった。
こういった、幸村のように人を惹きつける要素が自分には無いと真田は思っている。
自身はただ高みを目指してきただけだ。
副部長という役職もたまに部長副部長の署名しか受け付けない類の提出物を片付けるぐらいでしか名目を果たしておらず、やっていることはこれまでと余り変わっていないように思う。
真田が副部長と呼ばれそのことに異を唱えるものは居ないまま部員達が納得しついて来てくれる現状は、たまたま隣に幸村がいて柳がいて成り立っているだけに過ぎないと考えていた。
副部長に推挙された時は、むしろそんな自分を誰より知っている幸村と柳が即却下を申し渡すと思っていたらあっさりとその二人が受諾してしまった為に断る術がもう無かったのだ。
「お前はそれでいいんだよ」
そう静かな声で柳に言われてどういう意味だか分からずそのまま納得していいものか判別付けづらかったのだが、後ろで幸村がにやにや笑っていたのが見えたので多分分かっていないのは自分だけで、この二人が言うのなら本当にこれで良いのだろうと思うことにした。
それに柳は不義理なことを言う人間ではないとそれだけは知っていたから。
「ああもちろん精市も」
「うんうん、俺も蓮二はそのまんまでいい!そのまんまがいい!」
そういうわけで幸村が部長となり真田が副部長となっても同級生からは「余り変わらない」と言われる始末だった。
「でも役職就いてやっと相応って言うか、ハマってるよなー」とも。
柳がどの役職も蹴ったことが真田としては甚だしく不服だったのだが、そんなことを漏らすチームメイトと楽しそうに話している柳を見てうやむやに妥協してしまった。
「いやでも実際俺より真田より蓮二の方が忙しいと思う」
「言うな」
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