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柳蓮二は幸村精市に対し負い目があった。
以前テニスで組んでいたペアについて自分がどうも思うところがあると気付いた時からそれは始まっている。
何を思っているのか自分でもよく整理がつかない。我ながら珍しいというだけの感想を持ち、それ以上はたまらなく億劫で考えるのをやめた。
ただ自然と思い起こされる過去に時折思考を奪われる。
それだけだ、と思いつつもそれが幸村への延いては立海への不忠のように感じられて柳はその瞬間をことのほか嫌うようになる。
幸村精市は柳蓮二に対し負い目があった。
それは柳が何がしかに心憂がっていることを知りながらどう手を差し伸べたらいいのか分からなかったことに対してだ。
もっと言うならそもそも手を差し伸べようとしていることすら、この場合正しいのか分からない。
正しいとは何か。
それは柳の望む形でその支えを取り除くことだと思うが、何せその支えを柳がこちらに知られたくないと望んでいるらしいことくらいしか幸村には見当がつかぬままである。
考えあぐねた幸村はいっそ強引に手を取ってしまおうと決めた。
柳はそれできっと誰も責めないだろうし、万が一拠り所が必要となったらそれは事を進めた幸村だ。
それでいいと幸村は思う。
兎にも角にも幸村は柳に対して負い目など感じていたくは無く、ただただ対等でありたかった。 |