きっとまた二人 |
校庭に散った卒業生がやいのやいのと騒ぐ中、財前は目の前でニッコニコ笑みを絶やさない後輩に溜息を吐いた。 「不本意ながらほんまにお前のことだけが心配や。正確に言うとお前に振り回される周囲の人々、あらゆる物事が心配や」 「光ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」 その後ろで同じく後輩が「卒業せんといてー」とか何とか声が上がる。 財前はもう一度だけ溜息を吐いて 「光ちゃんって言うな」 とそれだけ言った。 当の本人は何も理解しておらず目を大きく開くばかりだ。 財前は表面上こそ冷めて見えるが面白いことには興味津々であり、一つ年下でありながら遠山はその好奇心を満たすのに恰好の獲物であった。 遠山も面白いことは大好きという点で気が合い、自分の相手ができる・してくれる財前は貴重な存在だ。友達は居るが、遠山のエネルギーについてこられる同級生は残念ながらこの学校には居なかった。 そんな遠山を財前は時に哀れむこともあったがこんなのが複数いても困ると頭を振ることがしばしばだ。 遠山は遠山でそんなこと丸きり気にしていない。それでもいずれどんどん生きにくくなるだろう。 だからつい「心配だ」という言葉が漏れた。 案の定この後輩は分かっていない。 来年いっぱいこの学校は持つのだろうか、校舎が。 「光、テニス、いつも打ち合ってるのは?」 「ん?どやろなぁ、今のとこやめるつもりあらへんけど」 とりあえず「卒業」というシステムは理解しているらしい。 「春休みいっぱいは、ええ?」 遠山がこういった遠慮がちな言い方をするのは初めてで、今度は財前が目を大きくした。 金太郎なりに遠慮と我慢を覚えようとしているのだろうか。 つい笑って全てを許してやりたくなるような、もうすっかり保護者のような気持ちだ。 「まぁ、しゃーないな」 遠山の額に自分の額をごんっとぶつけて財前は言った。 その頬が嬉しそうに歪んでいたので遠山もまた一層笑う。 そういったわけで財前と遠山は奇妙なことに二人でずっとやっていたしこれからもそうだと思っていた。 中学校に入り珍奇な人間を怖ろしいほど見ることになり、お互い顔を見合わせ「世界って広いねんな」と最初に言ったのはどちらであったか。 |