劫-kalpa-








 8年間、忌々しくも懇願するように開き続けた扉を今日も開ける。
 息が止まる。
 氷が溶け、冷気が立ち上る中に動く気配を感じ立ち尽くす。
 顔に酷い凍傷が走っている彼の顔。
 声が出ない。けれど視線は外せない。
 彼は俺を見て目を細めそして低く掠れた声で言った。

「生きていたのか」

 そういえば彼が自分を最後に確認したのは『ゆりかご』の時、血まみれで倒れた俺だろうからそのまま死んだと思っていたかもしれない。
 それともこの氷を溶かした誰かから8年経ったということをもう聞かされて、その間に俺が死んでいた可能性を考えたか。

 彼が死んでもいないけれど生きてもいないこの8年間、自分は不安と焦燥に駆られていた。自分が生きている間にまた会えるとも限らなかったし、例えこの氷が溶けたところで彼の身体が持つのか、とそんなことばかり考えていた。
 けれどそれは彼も似たようなものだったかもしれない。
 お互いがお互いを生きているのか死んでいるのか知らないままだったのだ。
 それにしたって「生きていたのか」なんてのはこっちの台詞じゃないのかこん畜生。

 俺はXANXUSを何故か正面から見れないで、けれど見ないでいるのはとても惜しい気がして視線を逸らせずにいた。
 そうしているうちに頬を熱いものが通って、それを放っておいてずっと奴を睨みつけていたら、XANXUSはやっと「何だ変わってねぇなぁ」と言った。
 言いたいことや言いたかったことがたくさんあった筈なのにそのどれも己の口から吐き出されることは無く、彼の目覚めはただひたすら静謐に迎えられた。





















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おまえが生きているのか死んでいるのか分からない、とても怖ろしかっただけのとしつきは今終わったのだ。