雨の日と








 兄を殺し城も燃やし捨て、立ち尽くしていた。
 そうしてどれだけ時間が経っていたのかは分からないが、雨が降ってきたせいで足場が悪くなり自分はその場にとうとう倒れこんでしまったので、数日経っていたのかもしれない。
 足音がした。
 いや実際には歩く音ではなく、人が歩くことによって木の枝や葉が立てる音だった。雨の音でかき消される程度。自分がそれを聞き分けられたのは一仕事を終えた後で気が昂ぶっていたからだろう。
 興奮状態にあった自分の精神が凪いでいくのを感じ取り、そして思う。こんな木が鬱蒼と茂る中でこんな歩き方ができるのは果たして人か。
 それを見てみたくて起き上がろうとするも、どうにも力が入らない。迂闊。指先を少し動かせるかどうか。
 顔や倒れた身体に刺さる土や石、枝や木葉の感覚も遠くなってきた。うっかりしてたけど虫もいるんじゃないのそういえば。うえ。
 雨が強くなった。
 それでもあの足音の捕捉は怠らない(今にして思えばこんなに必死ぶっこいたのはあれが最初かも)でいると、迷わずこちらへ歩みを寄せるのが分かる。
 俺の居場所が分かってやっているのだろうか。やってくるのは本当に人じゃないんじゃないか。
「雨かよぉ全くついてねぇなぁ。お前は雨男かぁ?」
 何かを返す声すら出ない重たい身体の向きをギリギリ動かし足音の主に目を向ける。
 そんなわけないじゃん雨を連れてきたのはアンタだよ
 そう思ったが口にはせず彼を見ていた。息をするのも忘れて。
 雨を連れてきたのはアンタだよ。だってアンタ雨の色をしてる。
 誰かの声を聞いたのは久しぶりで、それは雨と一緒にやってきた。

 雨のひととあめの日を





















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ベルとスクアーロの出逢い捏造。