安寧などと今を呼べない








 XANXUSの企てたクーデターに加担した連中は数日禁固されたもののこれといって懲罰が下ることは無かった。首謀者を除いて。ボンゴレ史上最悪と言ってもいいであろう武力政変未遂は黙殺されることで方針が纏まったのだろう。

 っていうかクーデター主犯を凍り漬けってどういう悪趣味だよ全く。
 一番外傷が酷かった(何たって現場は混乱していてボスとスクアーロの発見が遅れ、多分ボスが凍らされてから自力でボスの元まで移動したんだろう氷の上に倒れていたスクアーロは皮膚や傷口が氷に張り付いてしまって怪我を悪化させた。ちょっと内臓出てたよマジやばかったね)スクアーロも復帰した。
 本部から送られてきた書類を凄い早さでスクアーロが区分けしていく。その中には使用人口が著しく低そうな言語のものもあった。
「スっクアーロぉ、何コレ何語?王子が知らないなんてありえないー!」
「エスペラント」
 スクアーロは俺の手の中の紙っぺらを一瞥して答えた。書類の山から一枚取り出した俺を咎めたいのか少し眉を顰めたがそれは流す。
 俺はスクアーロの机に張り付いている。文字通り。
「ホントに使ってるヤツいたんだこんなマニアックなの。本物初めて見たよ」
 スクアーロはその書類をイタリア語に直して読んでくれた、手は止めずに。
 王子、この馬鹿がちょっと怖くなる瞬間。こいつホントにボスになれるよ。
「丁度いい、この任務お前行ってきやがれぇ」
 スクアーロは今まさに俺が持ってるエスペラントの文書を指して言った。
「ヤだよ読めない言葉で送ってくるような任務に行きたくないね」
 そもそもエスペラント語なんて浸透してない人造の言語、ちゃんと読めるのは本部にすら何人もいないだろうに。言語として扱えるのはヴァリアーの中だと多分ボスとスクアーロぐらいだろう。癪に障るがこいつは意外とそういう教育をちゃんと修了している。
「そりゃあそうだ」
 俺もお前の立場だったら同じことを言うねとスクアーロは笑ったけど、傷に響いたらしくその後顔をちょっと歪ませた。
「そういうわけのわからないのは俺が行けるもんなら行ってやりたいところだが」
「分かってる」
 スクアーロしか使えない読めないエスペラント語で任務を送ってきたりして本部も相当嫌味が効いている。
 スクアーロは暫くここから出られない。
「悪ィな」
 変な任務だったり馴染みの無い言語を使われたり、暫く現場は落ち着かないだろうがまぁやることやってりゃ殺されはしないだろうとスクアーロは言った。
 スクアーロが断言したということは、俺達は任務に見せかけて殺されるってことは本当に無いのだろう。
 ……何か取引させられたんだろうな、スクアーロと九代目の方で。
「その任務、もう一回読んでやろうかぁ?」
「いらね。王子舐めんじゃないよ」
 もう覚えたもんねーとライターを出してその場で紙を燃やしてやった。
「足は用意しとく。200分で仕度、出る前に顔出しな」
「了ォ解、先輩」
 ホントは「臨時ボス」って呼びたかったけど既でのところで踏み止まった。
 この時まだ俺達は、氷に閉じ込められたボスのことを口に出していいものかどうか判別しあぐねていたのだ。





















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ゆりかご直後の話。安息と平穏を装う日々。