扉の向こう、床に帰す








「スクアーロぉ――この書類の字ちょっとヒドいんですけど!」
 どうせ飯でもかっ込みながら空いてる手で書いたといったところだろう、先程人づてに渡された紙面に走る字はもう大変な有様だった。署名はスクアーロのもので、読めないわけでもないのだがどうせ文句を言えるなら言えるだけ言ってやろうむしろあることないこと言ってやろうと考えるが早いかベルフェゴールはスクアーロの部屋を躊躇無く開けた。
 そして部屋の中を見るなり今入ってきたドアへ逆戻り、思わずそのまま扉を閉めてしまった。
 とんでもない図だ。
 スクアーロが床で寝息を立てておりその傍らにXANXUSが座り込んでいるとは。
 せめてこれがベッドやソファの上でなく良かった(そんなほのぼの風景見せられても困る)とベルフェゴールは一瞬胸を撫で下ろすが、反射的に何で自分が遠慮するかのように退室してしまったのか腹立たしく思えた。
「そもそも俺、スクアーロの寝顔ってのを見たことが無いのに」
 なのに。何、あれ。
 もう一度、今度は扉を静かに開けた。
「ボースー、…スクアーロ寝てんのそれ?」
 XANXUSは視線をベルフェゴールへ一瞬向けた。
「俺が来た時からこうだ」
 床で熟睡とは任務疲れだろうか。寝室までもたなかったらしい。
 だからって何でボスが座りこんでるんだよとかせめてどっかに上げてやればいいのにとか突っ込まない方がいいのだろうとベルフェゴールは瞬時に理解する。
「何か用か」
 XANXUSの声が心なしか小さいように思えた。
「…んー。いいや」
 つられてつい小さい声になっており、そんな自分に辟易しつつベルは退室した。

 実はXANXUSがスクアーロの部屋へ訪れた時にスクアーロは一度反射的に起きていた。
 人が近づけば目が覚める職業病ともいえる習慣で起きただけのスクアーロはXANXUSが部屋まで来ているという状況がいまいち飲み込めず、暫し上司をぼんやり見ていた。
「寝てりゃいい」
「…そうする」
 そしてスクアーロは元通りに眠りについたのだ。
 いつもなら殴ってでも起こしただろうに今日に限って見逃す気になったのは、スクアーロにあれだけ真っ直ぐ目を見られたのはとんでもなく久しぶり(どこか気が引けるのかスクアーロがXANXUSと視線を合わせることは少なくなっていた)だったからだとXANXUSは思った。
 だがまさか他人があれだけ騒々しく部屋まで入ってきても起きないとは。
「どうしてくれようかこのクソミソカス」





















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いつもは熟睡しているところを誰にも見せないのに、XANXUSが傍に居るからベルが寄って来ても熟睡してられるスクアーロ。ベタですみません。
でもXANXUSもXANXUSで、逆の立場で同じことがあった自覚があるので強く出られない。とかだかったらいいよ。

ベルが「スクアーロの寝顔を見たことが無い」と言うのが書きたかっただけなのですが長くなった。