|
そういえば先週も雨だった。
スクアーロは少しの天候の悪さにも関わらず仕事をする。
雨の日なんか調子良さそうに見える時もあるくらいだ。足場が悪いだろうに。
「プロが天気なんか気にして仕事ができっかぁ」
「うっさいなープロだからコンディションに拘るんだよアホ!アホ鮫!」
「ベル、いくらなんでも口が悪いよ」
スクアーロはただでさえ忙しい暗殺部隊の中でも休みがからっきしな上に、そんなわけで天候に左右されないものだから「雨が降ったら何処其処行こう」なんて約束を取り付ける島も無い。
ベルフェゴールも今は彼の腕の中のマーモンも承知しているのだが、たまに鬱憤が溜まる時もある。
ああくそいっそ嵐でも起これ。
出掛けのスクアーロにそんなむくれた顔の二人の見送りで、玄関前に立ったスクアーロは何気なく右手の小指を差し出し二人もそれに応える。
彼の利き手は左手でありその左手が剣の為に、いや剣のせいもあるんだろうけど上司の為に義手の左手では人と指切りするには向かないから右手を出す。
そのことに気付いたのはいつだったろう。
ていうかこれはどこの国の風習なんだろうなと思いながら、スクアーロに以前教えて貰ったままに小指を絡める。
「休みになったらお出かけな」
忘れたわけじゃないから、とスクアーロが念を押す。
ああずるい、これでは自分が駄々っ子のようではないか。
「…いってらっしゃい」
渋々声を絞り出して言えたのはそれくらいだ。
「いってらっしゃい」
マーモンも続ける。
スクアーロは笑って最後に二人の頭を順繰りに撫でて行った。
ベルフェゴールは玄関を開け放したまま暫く雨空を見ていたのだが、肌寒さを感じて踵を返す。
玄関番が扉を閉める音をちょっと惜しいと思いながら聞いた。 |